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「ねぇ、聞いてよ……昨日またやられた」
深夜二時。
スマホに届いた友達からのメッセージは、毎回だいたい同じ始まり方をする。
“またやられた”。
私はその言葉を見るたび、ちょっと笑ってしまう。
だって彼女は、超絶くすぐりに弱い。
会った瞬間に脇腹をツンとされるだけで、
「ひゃっ!? や、やめてってば!!」
と本気で飛び上がるくらい弱い。
だから彼氏さんがそれを放っておくわけがない。
後日、通話で詳しく聞いた。
「その日も普通に寝てたんよ?」
「うんうん」
「そしたら急に、脇腹もにゅって触ってきて……」
“もにゅっ”
彼女、自分で効果音をつけるタイプだ。
「私は『やめてぇ!』って手を払ったんだけど、向こう笑っとるだけでさ」
『そんなに弱いの?』
「いや、本当に無理なんよ私!!」
電話越しでも必死さが伝わる。
彼氏さんはそのまま彼女の両手首を軽く押さえたらしい。
「え、待って待ってって言ったのに」
『逃げれんかった?』
「無理。普通に力強いもん」
そしてそのまま、脇腹を指先でこちょこちょ。
「ひゃっ、あっ、あははっ……!!」
彼女は布団の中で海老みたいに丸まりながら暴れたらしい。
「私さ、掛布団でずっとガードしとったんよ」
『防御してたんだ』
「うん。でも向こう絶対わかっとってさ」
次の瞬間。
ばさっ。
掛布団をめくられた。
「もう最悪!!」
電話越しに本人は笑っている。
でもたぶん、その時は本当に必死だったんだと思う。
彼氏さんは、
『ここ弱いんでしょ?』
ってニヤニヤしながら、彼女の腕を上に持ち上げたらしい。
「万歳状態よ!? あれほんと反則!!」
そしてお腹。
脇腹から逃げたと思ったら、今度はおへその周り。
指先で円を描くみたいに、
くるくる、こちょこちょ。
「や、っ……ぁ、ははっ……!」
彼女は笑うを通り越して、途中から声が出なくなったらしい。
「息できんのよ、あれ」
『そんなに?』
「本当に無理。お腹とおへそはダメなんよ私……」
しかも彼氏さん、完全に楽しんでいたらしい。
『顔真っ赤だよ?』
「そりゃなるって!!」
『かわいい』
「かわいくない!!」
そう言いながら、たぶん彼女は嬉しそうだった。
本当に嫌なら、こんなふうに笑いながら話さない。
じゃれ合いって、たぶん信頼なんだと思う。
「でも最後さ……」
『うん?』
「私もう力入らんくなって、“やめぇ……”しか言えんかった」
『降参じゃん』
「完全敗北」
そう言って、彼女はケラケラ笑った